メッキ・鍍金(ときん)とも呼ばれる、歴史ある表面処理技術

メッキは、金属製の皮膜を、金属だけではなく、金属ではない物質の表面にも加工することができる表面処理技術です。英語ではPlatingと呼ばれるメッキですが、日本では「鍍金(ときん)」や「滅金(めつきん・めっきん・めっき)」と呼ばれることもあります。メッキは「錆を防ぐため」「装飾のため」などさまざまな用途に使用されます。

メッキは表面処理技術

メッキ加工

メッキは、金属製の被膜を、金属、または金属ではない物質の表面に加工する表面処理技術です。メッキの用途は、主に「装飾」「腐食防止」「表面硬化」などですが、ほかにもさまざまな目的で使われています。なお「メッキ」という言葉はカタカナで書かれることも多いため、海外由来のようにも思えますが、英語ではPlating。日本では古くから仏像製作の際に金のアマルガムが使われていましたが、これが「滅金」と呼ばれており、「メッキ」という呼称のルーツだと考えられています。「鍍金(ときん)」と呼ばれることもあります。

メッキの仕事

腐食防止

材料を腐食(錆)から守るためのコーティングです。さまざまなパーツや資材などに使われます。

装飾

見た目を美しく仕上げるためのメッキの役割。もちろんさまざまな用途がありますが、自動車やオートバイパーツ、デジタル製品などに利用されています。

機能

メッキの大きな役割の一つに、この「機能」が挙げられます。メッキ処理することにより、電気的、物理的、機械的、熱的、科学的、光学的な特製を付加することが可能で、主に電子部品に使用されています。コンピュータの基板を見てみると、メッキは大活躍してることがよくわかります。

メッキの歴史

メッキの歴史はひじょうに古く、仏教と同時に日本に伝わったとされています。また、諸説はありますが、世界的には1500年から3000年前には、すでにメッキの技術が存在したと考えられています。メソポタミア文明の頃には、装飾品などに「すず」によるメッキが行われていたようです。
日本では、過去に古墳の出土品の中から、メッキが施されたものが確認されており、これが日本最古のメッキではないかと言われていますが、この出土品はすでに埋め戻されているため、真偽のほどは定かではありません。日本で、確実にメッキの手法がとられている歴史的存在は「大仏」などの仏像です。中でもよく知られているのが「東大寺の大仏」。奈良時代に作られた大仏様は、「アマルガム」と呼ばれる金粉と水銀を混ぜた物体を表面に塗布し、熱を加えることで水銀を蒸発させ、金のみを表面にメッキしています。日本ではよく「メッキが剥がれた」という比喩を使うこともありますが、メッキの技術は、日本でも長い間定着していることは間違いありません。江戸末期には、すでに薩摩の島津家により、甲冑(かっちゅう)に金銀のメッキが施されていて、これが日本で初めて行われた電気メッキだとされています。
その後、20世紀初頭にメッキの技術は飛躍的進歩を遂げ、現在もその進歩は続いています。

メッキの方法

メッキ加工

メッキにはさまざまな方法がありますが、その中でも主要なもの5種類をご紹介します。

電気メッキ

電気メッキは、電気を使って物質の表面加工をする方法。さまざまな金属を表面に加工することで、美しく金属的な外観に仕上げる、腐食から守る、寸法合わせのための肉盛り、などの用途に使用されます。溶液を使用する湿式メッキ法に分類されます。
「クロムメッキ」「金メッキ」「銀メッキ」「銅メッキ」「亜鉛メッキ」「すずメッキ」「はんだメッキ」などがあり、その中でもさらに細分化されています。

電鋳(でんちゅう)

電鋳は、電気メッキと同じように、電気を使って物質の表面加工を行う方法です。電鋳は、言ってみれば、電気メッキを何重にも重ねる方法で、強度が高く、しかも精密に仕上げることを可能にしています。レコード、CD、DVDに用いられるほか、加速器やロケット用エンジンなど、精巧さが求められる加工にも使用されています。

溶融メッキ

金属を溶かして、その中にメッキする物体を投入する方法です。被膜を厚く、しかも時間をかけずに連続して加工できることが特徴です。そのやり方から「どぶ漬け」などと呼ばれることもあります。溶融メッキの主なものには、溶融亜鉛メッキやガルバリウムメッキなどがあります。

真空メッキ

真空メッキには、プラズマ空間で表面処理を行う「イオンプレーティング」などの方法があります。プラスチックやガラスなどにコーティングすることができる技術です。乾式メッキ法の一つです。

無電解メッキ

無電解メッキは、メッキする物体の表面に、電源を使わずにメッキする方法で、化学薬品を使用します。無電解メッキには、無電解金メッキや無電解ニッケルメッキ、無電解すずメッキなどがあります。無電解メッキも湿式メッキ法に分類されるメッキ方法です。

メッキの設備

メッキ加工

メッキのやり方はさまざまですが、それに合わせるようにメッキの設備もさまざまです。基本的に電気メッキは、メッキ槽の中に金属を溶かしたメッキ液を入れ、整流器を使用して電気を通すことによりメッキを施します。電気メッキでは、このほかに揺動装置や濾過器、攪拌機、冷却器、などが設備されます。無電解メッキも、電気メッキと似たような設備が使用されますが、電流を通す必要はないため、整流器はありません。ただ、無電解メッキは化学反応を利用して行うため、メッキ対象の物体以外にもメッキが付着してしまうため、それを防ぐために電源を使う仕組みが付属しています。

バレルメッキ装置

バレルメッキ装置は、ひじょうによく使われている量産に適したメッキ装置です。バレルの内部にメッキする材料を詰めることで、一度に多くの表面処理が行えるよう作られています。

連続メッキ装置

連続メッキ装置は、巻き取りが可能な薄型の物体、たとえばプリント基板や鋼板などのメッキに使用されます。巻き取り式にすることで、連続で処理することが可能です。

ラックメッキ装置

ラックの中にメッキする物体を引っかけて、そのラックごと機械に浸すようにしてメッキ処理します。同じ物体だけでなく、形の違う物体でも一度にメッキ処理できるというメリットがあります。

かごメッキ装置

ラックメッキ装置と考え方的には近い装置です。ただ、かごメッキは小さな物体や、小ロットの物体の表面処理に適しています。

複合メッキ装置

複合メッキ装置は、単体のメッキ液だけではなく、その中に複数の材質をプラスすることができるメッキ装置です。

ブラシメッキ装置

電極が付いた特別なブラシを使ってメッキ処理を行う機械。手でメッキ処理を行うため、機械では難しい、ひじょうに局部的な作業をすることが可能です。

生活に息づいているメッキ

メッキは地球に文明が誕生した頃から存在する技術です。私たち日本人にもなじみ深い大仏様は、メッキの技術が使用されて建立されました。品物を美しく見せ、腐食から守り、そして機能性までをも付加することのできるメッキは、私たちの生活の中に息づいています。アクセサリーなどの宝飾品、自動車やオートバイなどの乗り物をはじめ、電化製品やコンピュータの基板に至るまで、そこかしこにメッキの技術が使われています。文明の誕生と共に生まれ、人類と共に進化を続けてきたメッキの技術。これからもメッキは、テクノロジーの進化と共に、人類の生活を豊かにしてくれることでしょう。